
【ラピデムアカデミー】特別講習レポート
-ングラ・スダナ氏との5日間を終えて-
「私はTeacherではなく生涯生徒です。自分の師からも、ここに居る皆さんからも常に教わっています。ベストを尽くし私の経験をシェアしたいと思っていますが、ぜひ皆さんは皆さんそれぞれのやり方を見つけてください。そして疑問に思うことがあれば、解ったふりをせず恥ずかしがることなく伝えてください。私たちはチームです。」
ングラさんの講座は、この言葉から始まりました。
今回は2025年4月に開催した「エナジーヒーリング & ボディマッサージ 魔法のヒーリングタッチを学ぶ5日間の特別講習」のレポートをお届けします。
ングラ・スダナ氏について: with Lapidem 012:ングラ・スダナ(ヒーラー・セラピスト エサレン®ボディワーク認定資格者) | ウェルネスジャーニーマガジン「In Deep Lapidem」
ヒーラーのングラさんは、エサレン®マッサージとエネルギーヒーリングを融合させたセッションを行っています。
エサレン®マッサージの特徴として、タッチ(触れること)・ロングストローク(軽擦)・波のリズム・ 立体的なアプローチ・アウェアネス(気づきを持つこと)・プレゼンス(今ここに在ること)・コネクション(自分自身との繋がり)が挙げられますが、これらは施術者にとってだけでなく私たちが真の意味で「健やかに生きる」ために必要なエッセンスであるように感じました。
また今回の来日では、ングラさんのセッションを受けられる日程も組んでいましたが「クライアントと、より深いレベルで繋がり、そのエネルギーに同調し、それぞれ個別のニーズに応えるマッサージ」というそのセッションは、セラピストであればそれぞれの経験への答え合わせのような、そうでなくとも素晴らしい体感をもたらすものとなりました。
これは、脳が睡眠と覚醒の間を行ったり来たりする最高の休息状態にあったからこそ得られる、深い場所からの解放によるものではないかと感じています。
そしてこの「解放」という感覚は、クライアント(Taker)と施術者(Giver)の双方に適切な準備が整ってさえいれば、いつでも与え受け取れるものだとこの後の5日間で学ぶことになるのでした。
Day1【グラウンディングの重要性】
この日のテーマは「自己認識とグラウンディング」「背面へのアプローチ」。シーツの上からクライアントの身体にそっと手を置くファーストタッチ、この瞬間にもクライアントは「快」「不快」を経験しています。

施術者の安定した姿勢はクライアントに安心と心地よさを与え、安定した呼吸はまた心身をリラックスした状態へと導く、といったような相互作用の体感を深めました。そのために行われたのがヨガと瞑想。施術者は呼吸を安定させたリラックスした状態にあること、意識を今に集中させていることが必須であり、グラウンディングできていてこそ初めてクライアントに触れることができるのです。
Day2【クライアントのみならず、自分自身を大切に扱うこと】
2日目には「細部へのアプローチ」が加わり、新しい技術、伴うタオルワークやドレープの作り方などが美しく目の前に繰りひろげられるようになりました。
例えば蛙のように脚を曲げた「フロッグスタイル」と呼ばれる臥位の施術では、大殿筋から大腿二頭筋まで広くアプローチすることができますが、クライアントの柔軟性や体格、また性別によって、体位を変える際には細心の注意を払わなければなりません。

まず、施術者はクライアントを正面に保持した状態で移動させること。施術者の重心と呼吸が安定した状態であるとき、クライアントは安心して身をゆだねることができるのです。安心はリラクゼーションをさらに深め、より深部へのアプローチを可能にすることができます。真剣になればなるほど視界は狭まり呼吸は浅く姿勢は不安定に。
そんな時こそ自身の姿勢・思考・感情がどのような状態にあるのかを正しく認識し、不安定であれば素早く中心へ戻ること。クライアントに対し最良な存在であるためには、施術者自身の心身すべても安定していることが不可欠だとの理解を深めます。
Day3【TakerとGiverはひとつである】
「仰臥位でのアプローチ」が加わる3日目。全身で笑うングラさんは、いつでも一人ひとりと真っすぐに対話をしてくれました。そしてこの日、対話とは言葉だけで行われるものではないことを学びます。これはエサレンでも重要な要素である「Touch」の意味、そしてそのもたらす影響についてとなりますが、Giverが何もせずとも「触れる」という行為によってTakerは内側で大きな気づきを得ている、ということです。

本来「Touch」とは、親が子に愛情をもって、また深く結びつくパートナー同士が慈しみの心をもって自然と行っていたものでした。それがいつからか、ある時は無意識に、またはエゴを伴い、またある時は商業として行われるようになってしまったのです。施術者としてクライアントに「触れる」とき、私たちは本来の意味で行うこと。本来の意味で行う限り、クライアントは意識せずとも深い癒しを得ることができるということです。
Day4【Giverは日々、自分自身をクレンズ(浄化)すること】
「頭蓋仙骨療法」「腹部へのアプローチ」など微細な手技が加わるなか、ングラさんが繰り返し仰っていたのが瞑想の必要性でした。例えば「頭蓋仙骨療法」は、脳脊髄液の循環をよくすることで脳内の神経系をはじめとした全身の神経系を穏やかにし、骨格を調整し、そのバランス回復を促すことで身体全体を調和させ自己治癒力を高めるワークなのですが、施術者はクライアントの頭部に指先で触れ、微細なエネルギーを感じ取ることに集中します。

頭部という神聖な場所に触れる行為において、最も大切なことは「中庸であること」。無意識に、またはエゴをもって行うとき、クライアントはこの素晴らしいワークの恩恵を受けることができないのです。施術者がバランスの取れた状態で今に意識を集中させたとき、指先からクライアントのエネルギーがハッキリと感じ取ることができ、おのずとクライアントの解放も始まります。そのために、瞑想やヨガなど自分を観察し浄化する時間を日々必ず持つこと。エネルギーに満ちリラックスした状態で今に存在すること。そうして初めて「触れる」という行為は本来の意味を持ち、クライアントを最良な状態へと導くのだと学びます。
Day5【ポーズ(静)の重要性】
最終日。学んだ技術を取り入れたワークをそれぞれのフローとして確認しあいます。“ロングストローク ~ ポーズ ~ ロングストローク ~ ディテール(各部位へのアプローチ) ~ ロングストローク ~ ポーズ“ といった ”動と静“ の構成において、ロングストローク(動)と10秒にも満たないであろうポーズ(静)の連続がクライアントと施術者それぞれに何を与えるのか。クライアントにおいてのそれは「潜在意識へ働きかける」ものとして、施術者にとってのそれは「今に存在する」ものとしての理解を深めます。
フローの中に訪れるポーズから得られる身体的また精神的な「気づき」は、絶え間なく動き回る思考からでは決して得ることはできないこともまた、受講生の方のシェアから理解を深めることができました。
全ての講座が終了し、無数のキャンドルを囲む私たちの元へウダンを被りサロンを巻いたングラさんが現れ「ナイトテンプル」が行われます。大地に根を張り、幹を伸ばし、枝葉を拡げた木のようにただここに在るための瞑想を行い、一人ひとりの意識が内側へと向かいました。

瞑想の必要性とともにングラさんが繰り返していたのが「Don’t pretend(解ったふりをしない)」。
この言葉には、ジャッジすることなく真実をそのまま正しく認識することの大切さが込められています。正しく認識することは施術者自身を怪我から守り、クライアントには最良の結果をもたらすことができるということ、この5日間を通してングラさんは私たちにとてもシンプルで美しい知恵『セラピストマインド』を教え続けてくれたように感じます。
最後は、ネイティブアメリカンに伝わるという “Farewell Song” を歌いクロージングです。
「起こることは全てがレッスン、全ては次回に活かすためのレッスンだよ」
「日本に呼んでくれてありがとう」
ングラさんが教えてくださったのは(彼は決して “教える” とは言いませんが)、すべて私たちが今を生きる上で大切なものではないかと思うのです。技術を遥かに超えたもの「人間力」のような。
5日間を終え私もポーズの休日。ポーズは意識せず行う呼吸のように、心地よくシンプルな気づきを私にもたらせてくれました。この「立ち止まる(静)時間」は、今を生きる私たちにとって多くの気づきを与えてくれるものなのかもしれないと感じています。
ご参加くださいました皆さま、そして知識を惜しみなくシェアし続けてくださった ングラさんに心からの感謝を。
Keep in touch, and “Terima Kasih”
