
浄化 × 食事
”カラダに心に溜め込んだものがじわじわと毒素になり、いつの日か弱ってきたところから不調が出て、病気が発症していく。”
アーユルヴェーダでは、病気のはじまりをこのように考えます。
つまり、「溜め込まない」「きちんと消化する」ということが大切とされています。
皆さんの日々の生活はいかがでしょうか。
美味しく味わって食べたつもりでも消化しきれなかったり、便秘になったり、何かの期限に追われてソワソワしたり、言いたいことを我慢してモヤモヤとした感情が出たり。でも、朝の目覚めは心身ともにスッキリ〜!が理想ですよね。
今回は、アーユルヴェーダの「パンチャカルマ」を通し食と浄化の関係についてお伝えします。
【パンチャカルマ】
アーユルヴェーダには「パンチャカルマ」という究極のデトックスがあります。
パンチャは「5つの」、カルマは「行為」を意味していて、体内に蓄積された毒素を排出し、心身の調和を取り戻すことを目的としています。
1. ヴァマナ:嘔吐法
ハーブ薬を飲んで嘔吐を促します。
2. ヴィレチャナ:下剤法
薬用ハーブで腸内を浄化し、体内の毒素を排出します。
3. バスティ:浣腸法
薬用オイルやハーブを含む液体を肛門から注入し、大腸を浄化します。
4. ナスヤ:点鼻法
鼻腔に薬用オイルやハーブエキスを注入し、鼻腔や副鼻腔を浄化します。
5. ラクタモクシャ:瀉血法
伝統的な方法で、体内の毒素を含む血液を浄化するためにおこないます。
ドクターの診断により、これら5つの中からその人にあった方法で浄化していくそうです。
「溜め込んだものは、ゆっくりと時間をかけて、カラダから排出させる。」
パンチャカルマは、西洋医学のように手術や薬で症状を取ったり止めたりするのではなく、その人の本来のカラダに戻して根本的な深い部分からの解決を促すことが目的です。
最低でも2〜3週間かけて、徐々にカラダを慣らしながら浄化のプロセスを踏んでおこなわれます。
生まれてから現在、この瞬間まで、年齢を一緒に重ねてきた自分自身の長年溜まってきたものの浄化を自分にあった処方でおこなえるというのは、自分自身に丁寧に深く向き合うことのできる素晴らしい体験となりそうですよね。とはいえ、多くの方は2週間以上という時間を自分の為に作るということはなかなか難しいのではないでしょうか。
実は、パンチャカルマは、インドやスリランカのアーユルヴェーダのクリニックで入院して受けることが可能で、リゾートホテルでプログラムに入っている所もあるそうです。興味のある方は、転職等の転機で長期の休暇が得られるタイミングで受けてみられてはいかがでしょうか。

アーユルヴェーダにおける食事の特徴
究極のデトックスが叶うアーユルヴェーダですが、食事との向き合い方にも大変興味深い特徴があります。アーユルヴェーダの食事法は、栄養素やカロリーをみるだけでなく、「食べる人」と「食材」の両方の性質をみていきます。
長年の伝統医学により、食事はその人のカラダだけではなくココロまでつくることが知られているため、この分野の研究や分析はとても広く深く、「なぜそこまでみるのか?」というところまで追究されています。
誰が、なにを、いつ、どんな風に食べるのが良いのか。
それは一般論では語れるものではなく、これさえ食べていれば健康でいられる!というものも存在しません。
私たちは、皆ひとりひとり体質や嗜好、ライフスタイルも違います。体内を巡るエネルギーも、刻一刻と変化しています。どこから取れたものか、熟れているのか、どんな風に調理されているのか。
食べる食材自体も、いつだって同じ状態とは限らないものです。
食事の中でも、アーユルヴェーダでは、口にしたものをきちんと消化するということを何よりも大切にしています。この消化力をアーユルヴェーダでは「アグニ」といい、ドーシャ※ 以上に大切なものとされています。
※ アーユルヴェーダでは、体質診断でヴァータ、ピッタ、カパに分かれる
それぞれ体質が違うように、アグニも人それぞれです。年齢によっても変わり、季節によっても変わります。生まれもって強い人もいれば弱い人もいますが、体質よりは工夫次第で強くしていくこともできるのだそうです。
十二指腸あたりにあるアグニを「お腹の中の火の神様」として、「神様にお供え物をするような気持ちで食事をしましょう」とアーユルヴェーダでは伝えられるそう。
その理由は、アグニを大切にしないと、消化できるものも消化できず未消化物が現れてしまうから。
未消化物は宇宙のちりのようなもので、カラダの中で浮遊しているため、流れているものを阻害するだけでなく、なかなか排出されず病気の原因になってしまいます。
カラダに未消化物が増えると、なかなか排出されない重みにより、様々な不調の症状が起こりやすくなるそうです。
- 倦怠感がある
- 元気が出ない
- 舌のコケが多く、口腔内の臭いが強い
- 腹部膨満感やおならがあり、便が臭う
- 朝に起きれない
だからこそ、自分自身のアグニの状態を理解して、消化力に合った食事を心がけることが、アーユルヴェーダの食事で一番大切とされています。
アグニのタイプ
アグニのタイプをまとめたので、ご自身と照らし合わせてみてください。
1. 不規則な消化力
消化が早いかったり、なかなか消化しなかったりムラがある。
便秘、下痢を繰り返すことも。
ヴァータが優勢な体質に多いです。
2. 鋭い消化力
食べた食事が規定の時間より早く消化される鋭い消化力。
規定の時間はおよそ5時間程度。
それより早くお腹が空いてイライラしてしまう方はこのアグニの可能性が。
ピッタが優勢な体質に多いです。
3. 緩慢な消化力
食べた食事が規定の時間を過ぎてもなかなか消化されない緩慢な消化力。
便秘というよりは朝が蠕動運動を忘れて動きが鈍っている状態です。
運動などの刺激ででることもありますが、体質的にはカパの優勢な体質に多いです。
その他、バランスのとれた正常な消化力を持つ方がいます。このタイプの方は、規定の時間に消化され、便の状態も普通。心地良く空腹感が出て、食事も美味しく食べることができます。
全ての体質のバランスが整うことで、このアグニの状態を保つことができます。

アグ二を高める食事法
アーユルヴェーダが理想とする幸せな人生は、身軽かつ安定感のある心身で、やりたいことをやり、行きたいところに行ける楽しみが溢れるものだといわれています。
そのような「幸せな人生」を送れるように、アグニを高めるアーユルヴェーダで大切な食事法をご紹介していきます。
1. 空腹を感じてから食べる
アグニは腸内の工場長のようなものです。
常に間食をして工場をフル稼働させていたら疲れてしまいます。
実際に、消化には沢山のエネルギーが必要です。
食べ方、食べる内容、食べた後の過ごし方などが消化力に合っていないと、倦怠感や集中力の低下、睡眠の質の低下にもつながります。
なんとなく口さみしいから食べる、時間になったから食べるといった食事はやめて、「お腹が空いたなぁ」というカラダの声を聞いてから食べるようにしてみましょう。定期的な時間に空腹感が出るようになったら嬉しい兆候です。
2. 朝と夜は軽めに、昼を最も重んじる
朝は起きたてで、カラダも目覚めようとしています。
夜はもう活動することもなく、眠りに入るだけ。そのため、軽めで温かいものをとるのが理想。昼食を重んじて食べるようにすると、カラダの流れが良くなります。
3. その土地のものや、旬の食材を意識してみる
体質やアグニがそれぞれ違うように、カラダに合う食材もひとりひとり違います。そんな体質を超えてすべての人にフィットする食材があります。
それは、旬の食べもの。
夏、体内に熱がこもりやすい季節の採れる夏野菜や果物はカラダをクールダウンしてくれる働きがあり、秋から冬にかけては甘く、カラダを温めてくれるものが多いです。
冬は人間の消化力も高まるので、脂を蓄えた魚や野生動物もきちんと消化できるようになります。また、醤油や出汁の匂いが漂うと食欲が湧くように、わたしたちのカラダは自分が暮らす土地で育った食べものを食べることがアグニのバランスをとるのに合っています。
自然はいつでもわたしたちが必要なものを差し出してくれます。その土地の、季節の旬に合ったものを選ぶようにしてみてください。
4. お白湯や生姜でサポートする
消化力が低いなと感じる人は、食後や寝る前、朝起きた時に少しずつ白湯を飲むことからはじめましょう。白湯はカラダを温めるだけでなく、消化を促し未消化物の排出にも役立つ、シンプルながらとても良い飲みものです。また、食前の生姜といって、薄切りの生姜に岩塩や天然塩をかけ、レモンを絞って食べるのはアーユルヴェーダで最も有名な食事法です。
5. 感謝しながらゆっくり落ち着いて食べる
アーユルヴェーダの究極のデトックス「パンチャカルマ」で心身ともに浄化されると自身の感覚が研ぎ澄まされてくるとか。

目:視覚
視覚を使い〝これからカラダにどのようなものが取り入れられるのかな“という情報をみること
手:触覚
フォークやお箸から伝わる触感で食材の感触をみる(硬さ、柔らかさ、粘り気、プルプルなど)
鼻:嗅覚
食べ物を口の中に入れるときに、食べ物の香りを楽しむ
口:味覚
食材一つひとつを味わいながらしっかりと咀嚼をおこなうことで、胃や腸の消化吸収を助ける
耳:聴覚
咀嚼の音パリパリ、やガリっと、啜る音などをしっかりと聴いてみる
お食事の際には、この五感を働かせながら、この時間に感謝をし、幸せな気分で楽しみながらいただく。食べることに集中して、目の前の食事に丁寧に楽しみながら味わうということ。これらがさらに胃や腸の活動を働かせてくれるのに欠かせないスパイスとなるそうです。
「毎日の食事こそが最良の薬である」と考えるアーユルヴェーダの食事法。
その過程をひとつひとつ、愛情をもって見つめてみると、ご自身に合った食事法がみつかるかもしれません。ムリなく美味しく、「わたしだけの心地良さ」を見つけて心身を整えていきましょう。