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旅とヨガ -ドミトリー ニューヨーク編-

旅の中で思い出に残っているドミトリーやホテルは数多くあるのですが、その中でも印象的だった一つをごしょうかい。

そのホステルはニューヨークのど真ん中にありました。

観光客も多く賑わっていますが、決して治安が良いとは言えない場所です。道のそこら中にゴミが落ちているし、鼻をつくような異臭もします。

ホステルのあるビルの入り口にも男性のホームレスが座り込んでいました。

私は彼の前を恐る恐る通り過ぎ、ホステルのインターホンを鳴らし中に入れてもらいました。

エレベーターはなく、急な階段を5階の受付まで上ります。


20キロの荷物を持っている自分を恨みながらたどり着くも、私の部屋はさらに2階上の7階だと告げられます。

ただただ絶句。

本気で5階に荷物を放置しようかと思いましたが、なんとか必死で辿り着いた7階で、私はまたすぐに絶句することになりました。

部屋の鍵を明けて扉を開くと、畳1枚ほどの硬い板で作られたベッドと小さなベッドサイドテーブルがありました。部屋にはそれしかありません。

というよりもそれしか置けないのです。

ベッドと壁の間は50cmほどしかなく、大きな荷物はベッドの上でしか開けられません。

私の部屋はその極小スペースが薄いベニヤ板で囲まれているだけの空間。どこかの部屋からゲップや、隣の部屋から寝息が聞こえるほどの薄ーい壁です。

もちろん部屋にバストイレはなく、7階に宿泊している全員でトイレ2つとシャワールーム1つを使います。

おまけに男女共用。

シャワールームは電話ボックスほどの広さしかなく、私でも狭く感じるほどです。水量はそれはそれはお粗末でなんとかお湯が出るレベル。

さらに扉の外はすぐトイレなので人と遭遇することも多々あります。もちろん男性の可能性も高い。

なんとも戸惑うことばかりです。

そして驚くべきはこの設備で1泊25,000円という価格。

もちろんニューヨークでは最安値のホステルです。ホテル代が高騰しているとは聞いていましたが、ここまでとは思ってもいませんでした。

それでもこのホステルは大人気で常に満室。

向かいの部屋には私よりもかなり大きくて190cmはありそうな男性が宿泊していました。部屋の作りはどの部屋も同じはず。

この大きな体であのベッド・・そしてあのシャワールーム・・・

そう思うと、気の毒でなりませんでした。

1日目の夜、眠れるのだろうかと心配したのも束の間、色々なことに疲れ果てたのでしょう。
驚くほど熟睡することができました。

 さて、そんなホステルですが朝ごはんは無料でついています。

ドミトリーでよくある朝食と同じで、ベーグルやパンやドーナツ、オートミールが置いてあり自由に食べられるのです。コーヒーや紅茶も飲み放題です。

物価の高いニューヨークではこれだけでも 本当に助かりました。

色々と絶句の連続だった夜が明け、朝食のコーヒーを飲みながら一息つく余裕ができた翌朝。

ふと気づきました。このホステル、いろいろな場所にヨガがあるのです。

受付や廊下にはヨガスタジオの案内やスケジュールが貼られているし、共有スペースのテーブルにはヨガに関する本がたくさん置いてあります。

おまけに部屋のベッドサイドにはバガヴァットギーターというヨガの古い教典が置いてあるのです。聖書が置いてあることはあっても、バガヴァットギーターは初めてです。

これはさすがに気になってスタッフの方に聞いたら、ヨガスタジオも運営されているとのこと。

そしてこのホステルやヨガスタジオの収益はホームレスの人たちへの定期的な炊き出しや支援の活動費に充てられていることを教えてくれました。 

壁にはこんなポスターが貼られていました。

「炊き出しを手伝ってくれるボランティアを募集しています。ただ、ボランティアできなくても、宿泊してくれるだけでも支援になっています。ありがとう。」と。

宿泊費が高いと文句言っていた自分を、ぶん殴りたい気持ちでいっぱいになりました。

宿泊することが誰かのためになっている。

それを知るともっと高くてもいいような気持ちになります。お金を正しく使うということはこういうことなのかもしれません。

チェックアウトの時、スタッフの方たちがホステルのオリジナルTシャツをプレゼントしてくれました。宿泊中、名前を覚えてくれて何かにつけて世話を焼いてくれてどれほど心強かったかしれません。

本来ならば大事にとっておくのかもしれませんが、残りの旅で私の大事なパジャマとして穴が空くまで愛用させてもらいました。

今回はスケジュールの都合で、ヨガも受けられなかったしボランティアのお手伝いもできませんでした。

本当に残念でした。

だけど、ヨガが好きで世界でヨガをしながら旅をしている私にとっては、なんともご縁を感じる ホステルだったし、改めてヨガとはなんぞやを考えさせてもらういい機会になりました。

投稿者プロフィール

Imai aico