1. HOME
  2. セラピー
  3. 香り
  4. アロマのはなし 第六回〖調香-ブレンディング〗
香り

アロマのはなし 第六回〖調香-ブレンディング〗

こんにちは。LAPIDEMインストラクター兼セラピストの寺島雪江です。

私がセラピストになった原点でもあるアロマテラピー。
アロマテラピーで精油を活用するとき、香りのブレンディング(調香)は、その効果を最大限に引き出すための重要なステップです。

精油の香りをどのようにブレンドするかによって、心身に及ぼす影響が異なり、その調香の過程には奥深い歴史と伝統があります。

今回は、香りのノート、ブレンドファクターについて詳しく知っていただきながら、調香の魅力とブレンディングのコツを紹介します!

【調香-ブレンディングの歴史】

香りの歴史は非常に古く、5000年以上にわたって人類の歴史の中で育まれてきました。最も古い香料の使用は、古代エジプトやメソポタミア文明にまでさかのぼります。

香りは神聖なものとされ、神への祈りの儀式や、死者への弔い、宗教儀式や治療の一環として香りのする植物を焚き、ミルラ(没薬)やフランキンセンス(乳香)などの樹脂系の香りは特に重宝されました。

「香りの歴史-前編」でも紹介した“キフィ”は、古代エジプト人に好まれていた香料で、ショウブ、カッシア、シナモン、ペパーミント、シトロネラ、ピスタチオ、ジュニパー、アカシア、ヘンナ、サイペルスなど23種類の植物がブレンディングされています。

香りの持つ癒しの力や魅惑的な効果は、長い歴史のなかで、様々な地域や国で愛されてきました。古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、アロマを使った治療法を提唱し、古代ローマでは、香りはとても贅沢なものとして使用されていました。

中世に入ると、ヨーロッパでは香りは医療や宗教的儀式だけでなく、貴族たちのファッションの一部としても取り入れられました。 17世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパの王侯貴族の間で調香技術が飛躍的に発展し、フランスが香水産業の中心地となり、近代の調香技術の基礎が確立されたと言えます。特に18世紀後半、グラース地方は「香水の都」として知られるようになり、現在でも多くの有名な香水がここで生産されています。

【調香-ブレンディングの基本】

調香は、異なる香りをバランスよく組み合わせる“アート”とも言える技術です。

アロマセラピーにおいて精油のブレンドは、香りのトーンやノート、さらにはブレンドファクターを理解することから始まります。

また、経験=試行錯誤も大切!最初から完璧なブレンドができることはほぼありません。(笑)

精油それぞれが持つ特性や香りの強さをきちん理解し、適切にブレンドすることで、心地よい香りや目的に応じた効果を生み出したり、理想の香りに近づけることができるのです。 押さえておきたい基本的なポイントは3つ。

  1. ブレンドの目的を決める

香りの成分には、リラックス効果やリフレッシュ効果、集中力を高める効果など、さまざまな効能があります。たとえば、リラックスしたいときは、ラベンダーやカモミールのような鎮静作用のある精油を、リフレッシュしたいときは、レモンやペパーミントなどの覚醒作用のある香りを選びます。ブレンドの目的に季節感やストーリーを取り入れると、さらに独自性が生まれます。

  1. 香りのノートを意識する

香りのノートとは、香りの感じ方や特徴を表す要素で、トップノート、ミドルノート、ベースノートの3つに分けられます。トップノートは軽く最初に感じる香り、ミドルノートは中間で、ベースノートは時間がかかるほど広がりをみせる香りです。
香りのノートのバランスを意識し、香りが時間とともに変化するグラデーションを作ります。

  1. ブレンドファクターを意識する

ブレンドファクターとは、香りの特性、化学成分の相性、香りの強さを表すもので、全体のバランスを考えたり、特定の効果を引き出したい場合にも重要な要素です。ブレンドファクターを意識することで、香りの美しさや機能性を最大限に活かして目的に応じたブレンドが可能になります。

また、精油には、それぞれ異なる香りのプロファイルがあります。
たとえば、柑橘系の香りはさわやかで軽やかな印象を与え、フローラル系は甘く華やかな印象、ウッド系は落ち着きや安定感が得られる香りです。同じ系統の香りの組み合わせは統一された印象を与え、異なる系統の精油をバランスよく組み合わせることで調和が生まれます。

ノートは香りの印象を伝えるための手段であり、ブレンドファクターはその印象を実際のブレンドに反映させるためのツール、と言えばわかりやすいかもしれません!

【香りのノート】

一般的に、香りのノートはトップノート、ミドルノート、ベースノートの3つに分類されます。

トップノートは、香水やアロマオイルを使った瞬間に最初に感じる香りです。柑橘系の香りやミント系の香りが代表的です。数分~数時間で香りを失います。

ミドルノートは、トップノートが消えた後に現れる香りで、ブレンド全体の中心的な存在になるため「ハートノート」とも呼ばれます。フローラルやハーブ系の香りが代表的で数時間続きます。

ベースノートは、香りの持続時間が最も長く、香水やアロマブレンドの最後に残る香りです。ウッディ系や樹脂系の香りで、ブレンドの土台として長いものだと1日以上香りが持続します。 香りが時間とともにどのように変化するかを計算するのがノートの役割。トップノートでインパクトを感じさせ、ミドルノートでその香りに定着を与え、ベースノートで長く心地よい余韻を楽しめるようなブレンドが理想的です。

【香りのブレンドファクター】

「いい香り」を決定づけるのはブレンドファクターです!

香りの特性:精油の特徴や香りの系統から調和した香りをつくる。甘い香りとシトラス系など、バラエティ豊かな香りを組み合わせると深みが増します。

化学成分の相性:同じ化学成分を持つ精油同士を合わせて相乗効果を生み出す。リモネンやリナロールなどの成分は一般的に複数の精油と相性が良いです。

香りの強さ:強い香りと軽い香りをバランスよく調和させる。一つの香りが他の香りを圧倒にしないように気をつけます。 香りの相性や、香りのバランス、精油同士の相乗効果を引き出すための調和の度合いをブレンドファクターから導いていきます。

【一般的な精油のブレンドファクターとノート】

ブレンドファクターは、それぞれの精油の強さや調和のしやすさ(1が調和しにくい、5が調和しやすい)を表していて、このメモがあると、より調和のとれた理想の香りを作りやすくなります。想像力を働かせて、香りの組み合わせ方を工夫してみてください!

調香-ブレンディングは、古代から続く長い歴史を持つ技術であり、心身に多くの癒しと気づきをもたらしてくれるものです。

精油それぞれが持つ特性や効能、香りの強さ、持続性、系統を考えながらブレンドしていく調香の工程は、とてもクリエイティブで、リラクゼーション効果の高い時間といえます。

調香-ブレンディングの楽しさを知って、自分にぴったりの香りを見つけてもらえたら嬉しいです!

次回は香りのブレンディング-実践編-をお届けします!

参考文献 「精油の安全性ガイド」(ロバート・ティスランド /ロドニー・ヤング)

投稿者プロフィール

Yukie Terashima
Yukie Terashima
Lapidem Tokyo Spa セラピスト&インストラクター

愛知県出身。ヴィセラジャパン、パンピューリジャパンなどを経て、2020年にセラピストとしてラピデムにジョイン。21年5月からはインストラクター業務に携わり、商品開発、トレーニングなど幅広い領域に従事。ライフワークはベリーダンス。