【精進料理×精神】
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
2023年の最初の記事を担当するラピデムのセラピスト田村が今回テーマに選んだのは
「精進料理×精神」です。
ちょっぴり難しいお話に見えますが、一年の始まりに日本古来からの姿勢、精神について考えてみると新年の今にちょうどいいかもしれません。
「いただきます」も立派な日本の大切な習慣です
わたしたち日本人が、食事の前に必ず口にする言葉「いただきます」。
手を胸の前で合わせ、「いただきます」「ごちそうさま」と唱える作法は美しく、それは、精進料理における禅の思想が根っこに存在するからではないでしょうか。
今回は、精進料理の精神性について詳しくお伝えしていきます。
禅宗の精進料理は、調理・食事・後片付けまでを含めた一連の流れを修行と捉えたものです。
肉や魚(動物性タンパク質)を使わない料理。
このままだと精進=「野菜」だと思われてしまいますが,もともとは「男らしさ,勇気,力」などを意味した言葉でした。それが,仏教では一生懸命に修行することという意味で使われたのです。ここから,今普通に使われている「努力すること」を意味するようになりました。
仏教の修行として重要なことの一つに,戒律を守ることがあります。
戒律には不殺生戒(ふせっしょうかい,生き物を殺さないこと)など厳しい決まりがあって,ふしだらな生活をせず,日常を律しなければなりません。そのため精進という言葉は「肉食をしないこと」や「心身を浄めること」などの意味へと発展していったのです。
こうして精進料理が考え出されていきました。
*調理の心得*
精進料理を調理するには「心から喜んで調理する姿勢」「思いやり」「冷静さ」が求められます。 そして、食事に際しては、食前に5つの文言を唱えます。
①「多くの人がいてこそ食事できる」
②「自分はこの食事に値するか?」
③「怒りやむさぼりが心にないか?」
④「食事は痩せ衰えないためのもの」
⑤「お釈迦様と同じように食事をいただきます」
というものです。 食事中は背筋を伸ばし、箸と器は両手で扱い、咀嚼中は箸を置き、しゃべってはいけません。また、食後はお茶やお湯とたくあんで器を洗います。
食を通してのこれら一連の決まり事や行為には、自身と向き合い、他者を思いやり、感謝する姿勢を醸成するものです。
精進料理を発展させた禅の精神には、「おおらかな心」、「調和」というテーマが根底にあるように思えますが、おおらかな心で地球環境(自然)と調和することは、時代が変わった今と求められていることは同じなのかもしれません。
また、曹洞宗には必ず食事の前に唱える偈文があります。
それが「五観の偈」という偈文です。
曹洞宗では宗旨である「坐禅」だけではなく、日々の行もすべからく、修行であり、とても大切なものだと位置づけています。特に、食事を作る事、食事をいただく事は、とても重要な修行とされ、曹洞宗の僧侶にとって大切な行となっています。
「五観の偈」
一、功の多少を計り彼の来処(らいしょ)を量(はか)る。
二、己が徳行の全欠を(と)忖(はか)って供に応ず。
三、心を防ぎ過(とが)を離るることは貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす。
四、正に良薬を事とするは形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為なり。
五、成道(じょうどう)の為の故に今この食(じき)を受く。
これが五観の偈の文になります。
〔一つには功の多少を・・・〕
今これから口に入れようとしているお米や食材が、ここに至るまでの過程を深く考えます。
毎日の料理は突然目の前に出てきたわけではありません。食材を揃えて、料理を作ってくれる方がいて、食材を仕入れて、提供している方がいます。
そしてご飯や野菜などを育ててくれる人がいます。多くの人の手間や苦労があって、今食事をいただくことができているのです。自然の恵みがなければ作物も育ちません。すべての命が繋がって初めてご飯を口に入れることに感謝しましょう。
〔二つには己が徳行の・・・〕
それだけの手間や命を頂くに値する生き方をしているか考えます。日常の生活で悪戯に食事をするのではなく、その食事をいただき、世の為人の為に役立つ生き方をしているか考え、至らぬ自分を戒め、反省していただきます。
〔三つには心の防ぎ・・・〕
人間は生まれながら仏性(良い心)があると仏教では言われています。しかし、反対に様々な煩悩を持ち合わせているのも人間です。その煩悩(悪い心)に流されるままだと、やがて仏性は濁り、貪瞋痴(むさぼり、いかり、ねたみ)の三業に心が焼かれてしまいます。三業は大いなるカルマとなり、人の心を貧困にします。その三業を断ち、自らの仏性に目をやり、謙虚な心で食事をいただきましょう。
〔四つには正に良薬を・・・〕
何の為に食事をいただくのか。ただ空腹を満たす為にあるのではなく、自らの生きる糧とし、心や身体が弱まらないように、いただきます。現在食育と言われていますが、なぜ食事をいただくのか、ここに多くの命をいただきながら生かさせていただいている、自己の命を見つめ、命を無駄にせず、良き薬として食事を頂く事が大切です。
〔五つには成道の為の・・・〕
ただ生きるだけの食事ではなく、全文4節をふまえて食事をいただくことこそが仏道において仏様の心であり、食事のいただき方になります。仏教に限らず、身も心も健やかに育むには食事はとても大切なものです。毎日食事は必ずいただきます。いただき方がとても大事になります。どんなに忙しくても、どんなに粗末な食事でも、この五観の偈を唱え、一度食の有難さを考察する事はとても大事ではないでしょうか。
食事は毎日の生業であり、生物で産まれたものは必ずこの因果によって生かされ、また命を失っていきます。人間には思考があり感情があります。人間に生まれた私たちは特に、この食事を頂くことを余計に思慮して頂く事が大切ではないでしょうか。
「いただきます」は日本人の一つになっているアイデンティティだと思います。
この「いただきます」を五観の偈の意味合いをもって考えるととても美しいひびきの言葉に聞こえてきます。
是非、いただきますやごちそうさまを大切にして日本の文化として継承していきましょう!!
《参考資料》
http://www.evam.ne.jp/evam/evam/faq/basic/cook/index.html
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